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モモカ・・・
それはさほど俺の心臓に響かなかった。
不思議な事に。
「学生の癖に良く言うよ」
これが彼女の口癖。
じゃぁ大学辞めれば満足か?
今すぐ働けば満足か?
どうやらそういう問題でも無いらしい。
女心?
どうして男の俺にそれが解るんだよ?
そもそも君はオトコゴコロを理解してくれようとしてくれた事はあるのかい?
「学生の癖に・・・」
これは私が彼との歳の差を思い出す為に使う呪文。
私より7つも年下なのに私より大人びた彼。
付き合い始めた頃は歳の差なんて気にならなかったのよ。
強がりじゃなくてこれは本当。
ツカサは私より10センチも背が高いもんだから気付かなかったのね、その顔の幼さに。
いくらミソジに近い私だってキスする時くらい目はつぶるのよ。
だから本当に、初めてベッドで彼と視線を合わせるまで気付かなかったの。
彼のその○○○に。
私は罪悪感さえ感じたわ。
まるで童貞の男の子でも買ったみたいに(でも実際ツカサのエッチは凄く上手で・・・それがまた私の気分を悪くサセル)それ以来私は街でツカサといると落ちつかなくなってしまったの。
ツカサも同じ気持ちなのか、それとも単にこんなオバサンと居るのが気恥ずかしいのか、彼は外では決して手を繋ごうとしてくれなかったわ。
・・・「シテクレナカッタ」と書くのは変よね、私もそれは望んでいなかったのだから・・・
『モモちゃぁん』
二人で居る時、彼は年下の男らしく私に甘えてくれるの。
それは私にとってかなり心地良い事。
母性本能がくすぐられてるのかしらね?
ツカサが外でクールぶってるの知ってるからこそ余計、こういう瞬間がたまらなくイトヲシイ。
『もぉもたぁ〜んっ』
こうしてじゃれている時間を俺は凄く幸せに思う。
モモカと俺は全部の感覚が全部同じ。
外では友達の様に振るまい、家の中ではバカがつく位いちゃつく。
大抵の女はこの「裏表」に文句をつけたがるのだが、モモカは違う。
それに、好きな食べ物も、好きな音楽も、好きな映画も、好きな娯楽も、俺とモモカは全部同じ。
ただヒトツ違う事は・・・
俺が好きなのは「モモカ」という人間でモモカが好きなのは「ツカサ」と言う人間って事位かな。
いや、ちょっとノロケすぎたか?
・ ・・だいぶ酒も回ってきたカナ。
最初に断っておきたいのは、私はツカサを嫌いになった訳じゃないと言う事。
誰か私みたいな恋愛を経験した事ある人いないかしら?
ツカサはね、××××なのよ。
そして大学2年生。
年下の男をたぶらかしてる罪悪感から別れを切り出した訳じゃないわ。
・ ・・ひょっとしたらそれも少しはあるかもしれないけど。
「だったら学校辞めてやるよ!!」
この複雑な心境、どなたか共感して下さる?
学生なことが問題じゃないのよ。
でも、でもね、
ワタシハアナタノミライヲセオイタクナイノ
喉まで出かかって言えなかった言葉。
・ ・・まだツカサに嫌われたくないのね。
「!!!」
彼女は一生懸命弁解した。
そして俺に大学を辞めないで欲しいと繰り返し言った。
『学歴なんて関係無いのよ』
モモカは俺が落ちた大学を卒業したらしい。
いや、それは今回の事に何の関係も無いのだが。
たしか俺がまだ高校生の頃流行った歌の歌詞に、「会う度私だけトシとればいいのに。」ってのがあったな。
あの頃は普通に「ありえね〜」って思ったんだけど今は普通にそれを望んでる。
でも、どうにもならないだろ?
だから俺は承諾した。
俺の女友達は口をそろえて言ったよ「カッコつけんな」って。
でもさ、俺はカッコツケなんだよ。
ちっさい頃から。
モモカは必ず俺が幸せにしてみせる、そう決めたんだ。
「私、結婚するの・・・・」
お決まりの落ちだろ?
俺、勉強嫌いなのにさ、かなりやったんだよ。
それでやっと大手に内定出かかってた。
そしたら、内定出たら結婚しようって言うつもりだった。
「〜するツモリ」
なんて無意味な言葉だって知ってる。
女友達は口をそろえて俺を「カッコイイ」と言った。
まぁ自分で自分の話してるんだから俺はツカサってヤツを悲劇のヒロインに仕立て上げたかもしれない。
で、女友達はこぞってモモカを悪く言った。
「オトコゴコロの解らない女だねぇ」
そうかしら?
私に男心が解らないって?
そんな事無いのよ。
でも私も、もう30。
実家は決して都会じゃないから・・・友達はどんどん結婚して行くわ。
子供を持った人も居る。
脱バージンを競ったあの頃と私の頭は何も変わってないみたいでさ、もぅ早く結婚したいの。
彼は優しい人よ。
ツカサみたいな可愛らしさは無いけど、人生の伴侶にするに十分だもの。
だからツカサに電話したの。
「私、結婚するの」
で、なんで電話したんだろう?私。
・・・女性なら解って頂けるかしら?
多分止めて欲しかったのよ。
それでもきっと結婚は辞めなかったと思うけど(負け惜しみ?)少しくらい悔しがって欲しかった。
マリッジブルーと言われればそれもそうだけど・・・私はツカサを嫌いになった訳じゃないの。
ただ彼以上に自分が好きなだけ。
ほら、私と彼とは何もかも同じだから好きな人も「モモカ」で同じなのよ。
妹は良くツカサの話をしてくれたわ。
大企業に内定出そうだって。
・ ・・私が落ちた会社にね。
だからホント、あてつけに言ったのかもね。
最終面接の前の日にわざわざ電話して言ったのかもね。
「私、結婚するの」
あの日の空の形すら、俺は絵の具と紙さえ持たせてもらえれば寸分違わず再現できる自信がある。
だってもう「学生」云々って言われたくなかったんだよ。
モモカを幸せにしたかった。
だから気合入れて就職活動してきた。
モモカが納得する会社に入ってモモカを幸せにして・・・
でももうモモカは居ないらしい。
でももうモモカは居ないらしい。
でももうモモカは居ないらしい。
「お互い幸せになろう」
・ ・・最後までカッコつけられちゃった。
なんでツカサはこんなにも大人なんだろう?
7つも年下のくせに、なんでそう言う事言うんだろう。
それとも私はもう愛されてないのかな。
全然想われてないのかな。
あぁ、そっか・・・
ツカサが私を好きだなんて私の都合の良い思い込みだったんだ。
「そうね」
って答えるしかないじゃない?
それで電話を切って・・・
泣くのは変ね。
でも泣いたわ。
何の為の涙?
それは知らないけど。
でも一応泣いたわ。
可哀想な私が絵になる様に・・・
それで俺は頑張ったよ。
ここで落ちたらシャレにもならない。
これは誰にも言ってないんだけど、最終面接で俺が熱く語ったあの言葉、あれは全てモモカへのものなんだ。
「俺に出会えて良かったと、全てのお客様に言っていただきたいです。絶対に期待にそむいたりはしません。だから・・・」
ごめん、間違えた。
ここから先はサスガに面接用の言葉をつけたんだった。
ホントに言いたかったのは
「だから、捨てないで・・・」
そうだ、俺は捨てられたんだ。
「幸せになってね」
良く覚えてないけど・・・
多分最後はこう言ったんだと思う。
あぁ、月並みだよ。
でもこれしか思いつかなくてさ。
なぁこれを読んでる女性陣、教えてくれよ。
昔の男に結婚を報告する女心を。
俺、何か間違えたかな?
それで、それから半年以上して年賀状が届いた。
モモカから。
不細工な女と男が写った写真の下には
「結婚しました」
の文字。
こんな不細工な花嫁なんているんだな〜(いや、これは本当に)
良く見るとモモカはあまり可愛くなかったのかもしれない。
そうだよ、モモカは俺には不釣合いな女だったんだ。
そうだよ、そうだよ・・・
「ツカサ?」
背の高い男を見つけるとどうしても振りかえってしまう。
変ねェ・・・
あの頃とは違う指輪が私の薬指にはきちんとはまってると言うのに。